オリンピックがなんぼのもんじゃい

 ツール・ド・フランスが終わって、次のビッグイベントといえばオリンピック、といきたいところだけど、自転車の男子ロードレースにとって、オリンピックってのはたいして重要な大会じゃないんよね。
 オリンピックは長いことアマチュアスポーツの祭典だったわけで、プロを中心に発展してきた競技にとってはしょせんは「アマチュアナンバーワン」を決める大会、プロになるための箔をつけるための大会でしかなかった。サッカーとかボクシングとかがその典型だし、自転車男子ロードレースもそうだった。
 サッカーだとワールドカップ、テニスだと4大大会の方が名誉なのと同じように、自転車の世界でもグランツールや世界選手権の方が権威がある。アトランタで勝ったRichardはオリンピックゴールドメダリストジャージを着ていたけど、シドニーで勝ったUllrichは、ドイツチャンピオンジャージを着ていた時期はあってもゴールドメダリストジャージは着ていなかった。
 さらにいうなら、ヨーロッパは日本やアメリカほどオリンピックを重要視していないということもある。バルセロナオリンピック直前、スペインではオリンピックのことを忘れたかのようにツール・ド・フランスを走るIndurainに熱狂していた。同じような状況が今年のギリシャでも起きていた。「国の名誉のために」というモチベーションは乏しい。
 経済的なことを考えると、各国の代表は5人。自転車強豪国で選ばれるのはトップクラスの選手ばかり。「ここで一発目立って来年の契約取ったるでぇ」というモチベーションはない。
 ただ、自転車が他のプロ中心競技と違うのは、歴史的に普段からドーピング検査を厳格にやっていること。「ドーピング検査にひっかかって騒がれるのがいややからオリンピックなんて出えへんで」ってのはまず考えられない。だから、野球、テニス、バスケットボールなどと違って、ひととおりトップ選手は揃う。
 オリンピックでモチベーションが高いのは小さな国の選手、ヨーロッパのプロチームから声を掛けてもらいたい選手。というようなことで、シドニーの時はVinokourovが優勝すると予想したんやけど、惜しくも銀メダル。計算外は、Ullrichがオリンピックに執念持っていた旧東ドイツの出身だということを忘れていたことだった。