越境の時 一九六〇年代と在日 (集英社新書) / 鈴木道彦

越境の時 一九六〇年代と在日 (集英社新書)
 80年代にはよく見かけていたような文章だなと思った。

刑法的評価の対象という枠内でいくら行為を考察したところで、生きたみずみずしい人間の現実に到達することなどなるはずがないだろう。

 176ページ。人間のみずみずしい現実を考慮せずに裁くからこそ刑事訴訟なのであって、そこにみずみずしさなどという主観が混じるということは罪刑法定主義、もしくはその背景にある法治主義と反することになってしまう。自分が「みずみずしい人間の現実」だと思っていることは他の人にとっては「みずみずしい人間の現実」と正反対の物かもしれないとか思わんのかいな。

国民国家の形成される19世紀ならともかく、とても21世紀を生きようとする人間のやることではない。私たちは、そういうものが乗り越えられ、解体されていく過程にすでに入りこんでいるのに、

 240ページ。
 ええっ、国民国家が乗り越えられようとしているんですか。解体されようとしているんですか?19世紀型の国民国家は確かに解体されているかもしれないけど、それにかわって21世紀型国民国家が形成されているだけのような気がするんだけど。「いや、今の各地の紛争は国民国家の最後の悪あがきなのさ」とでもいいたいのかもしれないけど。