借りたままのサリンジャー

 日本経済新聞の一面下のコラム「春秋」の1月31日付け。

作詞家の秋元康さんに文学趣味の作品がいくつかある。「サルトルで眠れない」「赤道を越えたサマセットモーム」などとオシャレだ。有名なのは「借りたままのサリンジャー」だろうか。かつて、アイドル歌手が歌って少しはやった。

サリンジャー。この小説家の名を聞いただけで青春時代のほろ苦さや憂鬱(ゆううつ)、出口のない焦燥が胸によみがえる人も多いに違いない。秋元さんも詞にそんな思いをこめたのだろう。代表作「ライ麦畑でつかまえて」は全世界で6500万部以上が売れ、今も若い読者を増やしている。永遠の青春文学といってもいい。

▼それほど著名なのに半世紀ほども沈黙を貫き、伝説的存在だった作家の訃報(ふほう)が届いた。日本では村上春樹さんが「ライ麦畑」の新訳を送り出し、新たな視点が生まれるなかでの死だ。米国ニューハンプシャー州の田舎町で隠遁(いんとん)生活を送っていたという氏は、移ろう世と人間の悲喜劇をどう見つめていたのだろうか。

▼どんな時代にも共感を呼ぶ青春の息遣いを描ききった鬼才である。すべては作中に封じていたのかもしれない。黙して逝った作家を悼み、きっとこの週末は世界中で「ライ麦畑」の、「フラニーとゾーイー」のページが繰られることだろう。彼に彼女にいつか借りたままの本を取り出し、思いにふける人もいよう。

 「借りたままのサリンジャー」を知っている世代が春秋を書くような時代になったということか。
 オールナイターズには全く興味がなかったけど、この曲は好き。たぶんシングルレコード持っているはず。