原発と権力: 戦後から辿る支配者の系譜 (ちくま新書) / 山岡淳一郎

原発と権力: 戦後から辿る支配者の系譜 (ちくま新書)

原発と権力: 戦後から辿る支配者の系譜 (ちくま新書)

 福島原発の事故について、東京電力原子力安全・保安院や政府を罵るのは気持いいのかもしれないけど、正しい態度ではないと思う。原子力発電の推進やそれに関わる諸制度は正当な選挙によって選ばれた国会議員が作った法律によって形成されたわけだから、国民全体にその責任がある。「国民は正しい情報を知らされてなかった」というかもしれないけど、そんなふうになったのも国民の選択の結果。そういう失敗を繰り返さないためにも、原発推進の過程を検証することが必要。もちろん正力松太郎田中角栄中曽根康弘、あるいは自民党を悪もんにするのではなく、彼らを支持した自分たち国民の判断、さらにはデモクラシー観、国家観についても検証が必要なんだと思う。「地元に税金を持ってくるのが政治家の仕事」というような考えが原発大国化を生んだんだから。忘れちゃいけない、原発の防衛的な意味についても、隠さず議論すべきだと思う。
 この本の厚さでそこまで全て述べられているわけではないが、大雑把な流れをつかむには手頃だと思う。