国家の品格 (新潮新書) / 藤原正彦

国家の品格 (新潮新書)
 タイトルからして「国家と国の区別がつかない、あるいは意図的に混同した、ジジイのたわごとかな」とか思っていた。読みはじめてみるといきなり

 これから私は「国家の品格」ということについて述べたいと思います。わが国がこれを取りもどすことは、以下に時間はかかろうと、現在の日本や世界にとって最重要課題だと思います。

 ってな書き出しでかなり滅入った。でも読み進めていくと、さにあらず。教養と品格にあふれた書だった。
 でも、この本って読む人によって結論(読後の思い)って全然違うだろうな。帯にあるように「誇りと自信」を感じる人もいるだろうし、自省の念にかられる人もいるだろうし。自分の都合のいい部分だけを記憶し、自分の好みにあう方向に考えてしまうだろう。誰が何を非難するにしても「武士道精神が欠如している」ってフレーズは使えそう。
 武士道精神が農民や町人にまで広まっていたって本当だろうか?江戸近郊ならあり得ると思うけど、片田舎でそこまでいっていただろうか?たとえばエルトゥールル号の遭難者を助けた人たちの行動ってまさに武士道精神と説明できるだろうけど、そんな意識があっただろか?武士道精神が広まったんではなく、広く共有されていた価値観を武士向けに再構成したものが武士道なんじゃなかろうか。