自衛隊内で反国家教育がおこなわれている

 マスメディアは全然ツッコまないけど、11日の参考人招致でいちばん問題なのはこの部分じゃないかと思う。

井上氏「当時、統合幕僚学校長だったわけだが、陸海空のすべての幹部教育の体系を改定したということ。この教育はすでに4年間行っている。教育目的としては、上級部隊指揮官または上級幕僚としての職務を遂行するに必要な広範な知識、技能を習得させるとなっている」

 「具体的に平成16年度の教育目標をみると、健全な歴史観・国家観を育成し、防衛戦略研究および将来の部下指導に資する、となっている。平成20年のものをみると、例えば『大東亜戦争史観』『日本国憲法の本質』とある。ほかの年度をみると『東京裁判史観』という項目もある。こうした呼び名自体が侵略戦争を否定する中で使われる言い方だ。大臣は先日『今後とも、村山談話などの政府見解を踏まえた適切な幹部教育に務める』といわれたが、こういう内容の歴史観、国家観教育が適切とお考えか」

浜田靖一防衛相「いやあの、私もですね、今、委員からお話があったようなそのカリキュラム、中身については私も把握しておりませんので、今、その件に関して私の考えは申し上げられません。中身をみさせていただいて、どういうことなのか、ということは確認したいと思いますけれども、今この場で、発言はひかえさせていただきたいと思います」

 井上氏「何が行われているかを把握していない。重大だ。資料では、講師名は伏せてある。なぜ伏せる必要があるのか。実は、平成18年の内容の一部は、大正大学福地惇教授が4月17日に行ったとホームページで明らかにしている。講義目的は、第1に昭和の戦争は東京裁判の起訴状と判決によるような侵略戦争ではまったくなく、自存自衛のためにやむを得ない戦争だったこと。それが了解できれば、現憲法体制は論理的に廃絶しなければならない虚偽の体制だと断言できることを論ずることであります、と言っている。論文で明らかにしたにとどまらない、村山談話にも政府見解にも反するような、特異な歴史観自衛隊幹部全体に職務として教え込むというやり方が、田母神氏が主導したといわれる。大臣、重大だとは思わないか」

 村上談話や政府見解に反するなんて話は小さなこと。自衛隊内で憲法を否定する教育がおこなわれているわけですよ、奥さん!
 自衛隊は日本国という国家の軍事力であって、その日本国を作っているのは憲法だし、憲法の理念や手続きに従って日本国は存在しているといえる。いわば国家=憲法。その憲法を否定するというのは、自分たちがよって立つ国家を否定するということ。これすなわち国家に対する反逆を肯定していること。
 しかもですよ、憲法を「廃絶」すべきだそうですよ、奥さん。日本国憲法には改正手続きは書いてあっても「廃絶」なんて手続きはない。「憲法を廃絶」というのは超憲法的な手段。となると外国に占領されるか軍事クーデタくらいしか考えられない。もちろん外国に占領されることを前提として話しているわけはないから、これはクーデタの勧めということになってしまう。
 自衛隊で教えるべきことは、立憲主義とか法治主義とかの意味、国と国家と政府との違い(参考人招致での発言を読んでいると、田母神さんも見事に混同しているようだ)、さらには自分たちが守っている日本国国家が目指しているもの、すなわち憲法でなにを掲げているかとかの話なんだと思う。一方で憲法には「軍事力持たへんでェ」とか書いてあるので、やりにくいことこの上ないだろうけど、それもまた現実として淡々と受けとめるしかないんじゃないかなぁ。
 隊員の士気うんぬんもゆうてたけど、隊員の士気は「われわれの何世代か前の人たちも悪くなかった」と思うことではなくって「日本国民が作りあげている今のすばらしい日本国国家をわれわれが守っているんだ」ということを理解することによって上げていくもんじゃないのかなぁ。
 まぁすべての原因は憲法を改正することなしに自衛隊を作ったところにあるんだろうけど。