国民の投票原理は変わってないんちゅかな

 自民党の大勝だった2005年総選挙と民主党が大勝した今回の総選挙、見かけは違うけど、総体としての国民の意識は同じなんじゃないかと思う。それは「昔のやり方はもう通じへんで」ってこと。


 冷戦が終わり、交通・物流やITが発達することによって、ヒト、モノ、カネ、情報の移動の自由が大幅に拡大した。高度成長も終わったし、再現も期待できない。それまでの時代の土建屋政治的なものは、不公平感はあったものの、デモクラシー的考えが未熟でそれがあたりまえだと思われていたし、みんなの所得が増えつづけ、生活も豊かになりつづけていたので、なんとなくみんなそういうものだとがまんできていた。
 しかし、成長の前提が通じなくなり、またデモクラシーの原理からしてもおかしいということを国民も理解し、これまでのやりかたにかわるものが必要だと思ったことがこんな結果になったんだと思う。


 小泉政権は「自民党をブッ壊す」のフレーズに象徴されるように、従来のやり方をかえようとした。土建屋政治の象徴でもあった高速道路を民営化し、談合を取り締まり、資金源である郵貯簡保を民営化した。ばらまきではなく、小さな政府、財政再建を目指した。税金をどう使うべきなのかを国民が考えるようになった。それが2005年総選挙の結果だった。
 ところが、あとを継いだ安倍政権はあきらかに逆戻り志向だった。麻生政権に至っては、マスコミの批判を真に受けて「小泉改革は間違いだった」とでも言いだしかねない勢いで、景気対策マニフェストもひと昔前の、ばら撒き型のものしか提示できなかった。つまりは期待を裏切ったということ。


 民主党の掲げた政策はかつてのばら撒き型に近いように見える。でも業者視点を前に出しているか、生活視点を前に出しているかというバックボーンの違いは大きい。マニフェストの表面だけみれば自民党のものも似たようなもの、というか区別がつきにくいほどのものだが、もはや信じてもらえない。


 これから政治がどのように動こうとも、以前の土建屋型政治には戻れないということを前提に考えないと自民党の復活はない。けど、どっちかというと土建屋型政治家がやたら目立つのを見ると、今のままでは期待薄だろう。
 民主党も、グローバルな規模でヒト、モノ、カネ、情報が動き回っているという現実にあらがうような公約はとっとと捨てないと同じ轍を踏むことになるだろうな。変節しても、きちんと説明すれば国民は納得するはず。