中部電力と四国電力は29日、2006〜07年の国主催の原発関連シンポジウムで、原子力安全・保安院から「やらせ」の指示を受けていたと発表した。原発推進をめぐる「やらせ」問題の深刻さが浮き彫りになった。海江田万里経済産業相は同日、緊急記者会見し、「事実であれば大変申し訳なく思う」と陳謝。第三者委員会を設置して事実関係を調査し、8月中に結果を取りまとめる方針を示した。
今回の問題発覚は、九州電力が玄海原発(佐賀県玄海町)再稼働をめぐる国主催の説明番組で、関連会社や取引先に賛成意見の「やらせメール」投稿を指示していたことがきっかけ。経産省が電力会社7社に対し、過去5年間に国主催で実施した原発関係のシンポジウムについて、この日までに同様の事例の有無を調査し報告するよう求めていた。
報告や各社の発表によると、中部電は07年に開いた浜岡原発(静岡県御前崎市)のプルサーマル計画をめぐるシンポジウムで、保安院から質問が反対派に偏らないように地元住民に要請することを口頭で依頼された。ただ、同社はコンプライアンス(法令順守)上、問題があると判断して拒否したという。
四国電は、06年の伊方原発(愛媛県伊方町)のシンポジウムで、同じく保安院から円滑な運営への協力を求められ、社員や関連会社に対し会場で質問するよう要請。実際に質問した15人中、10人が四国電の要請を受けていたことが明らかになった。(2011/07/29-18:33)
コンプライアンスという点から監督官庁の話を断るって、なかなかできることじゃない。たいしたもんだと思った。
そもそも、コンプライアンスに反する可能性があると監督先に指摘される役所ってどやねん。
で、こんな記事も。
現場が“良心の砦”に
原子力安全・保安院からの「やらせ依頼」をはねつける判断をした現場のキーパーソンは誰なのかといえば、浜岡原子力発電所のトップである水谷良亮総合事務所長だ。
会見後、法務部の担当者は「地元の信頼が第一である、という考えは、水谷所長の強固な信念。コンプライアンス担当の法務部に相談があったという記録はなく、当該問題の最高責任者である水谷所長が、自らの判断で、正しい判断をした、というのが実際のところだ」と明かした。本店の原子力部門の社員は、一度は地元住民に依頼する発言の文案を作成していたという。そうした動きはあったものの、現場のトップである水谷所長が、最高責任者としてコンプライアンスに従ってしかるべき処理したということのようだ。
(山田 俊浩 =東洋経済オンライン)
日本の産業は現場に支えられているという実例がここにも。