報道にツッコミ入れてみる

 行政の立場からの再発防止策は「人間の内面の問題だから、そんなものはできない」と説明した。

 まったくもってあたり前の発言だと思う。というか、こういう質問するのってはずかしくないのか?

 関西学院大学鮎川潤教授(犯罪社会心理学)は「『街で武器が売られている』ということを恐れる人は多い。規制は、市民の不安を減らす効果はあるだろう」と分析するが、犯罪の根絶には直結しないとみる。「包丁などナイフの代替の刃物はいくらでもある。規制を設けたから凶悪事件がなくなるという単純な話ではない」と指摘している。

 これまた至極まっとうな話。でも「不安を減らす」「対策したかっこうをする」ってのは必要なんだろうなぁ。

 これに対し、ある警察関係者は、犯人がわざわざ福井市まで行ってナイフを入手した点に注目。「趣味性が強く、用途が限られるナイフについては、犯罪抑止のため、販売時に身分確認や住所、氏名の記録をすることを検討すべきではないか」と、話している。

 たとえ記録したところで、今回のような犯罪が防げるはずがない。住所氏名を確認して借りたレンタカーで跳ね飛ばしているんだし。
 そういえばナイフと並ぶもうひとつの凶器である車に対してはなにも規制話が出ないなぁ。

 わが国は長年、治安の良さを誇ってきた。国民は「治安は警察に任せておけば大丈夫」との認識が強かった。しかし、これだけ凶悪で想定外の事件が頻発したのでは、そうは言っていられまい。
 国民一人一人が治安対策に関心を抱き、安全への自覚を持つことが肝要だ。繁華街などは、警察はもとより地元の商店街、地域住民が安全で安心な街をどう構築していくかも喫緊の課題である。

 これまた無理のある主張。安全で安心な街をつくっていくことと今回の事件には関連がない。その程度のことであの事件を防げるはずがない。
 「警察任せじゃあかん」というところには共感するけど。

 加藤幸雄・日本福祉大教授(犯罪心理)はナイフを使う理由を「見せかけの万能感をもつ人間が、実際には未熟な自我を補い、自分を強化する道具として手にする。銃社会であれば乱射になってもおかしくない」とみる。
 「社会から離脱し、何をしたらいいか分からない人間による脱社会型の犯罪では」と分析。
 犯罪の抑制には「自分の周囲で誰かが孤立してないかという問いをそれぞれが持っていくこと」とし、「自暴自棄型のある種の『拡大自殺』ともいえる。巻き添えをつくり、自己の存在感を示す。仲間を集めるネット自殺ともつながっている」と話した。

 拡大自殺というのは言いえて妙だと思う。ネット自殺とのつながりはあまりないような気もするけど、巻き添えを作ることによって存在感を示しているという点では硫化水素自殺に近いかも。
 今回の場合は、見せかけの万能感を持っていたんじゃなくって、無力感をナイフで埋めあわせて万能になろうとしたんじゃないかと思う。

 ■評論家の大宅映子さんの話 誰でもいいから殺したいというだけで、何人もの命を奪ってしまう事件が起きたこと自体に、社会全体の犯罪に対する抑止力が低下していると感じざるを得ない。自暴自棄になった末、命を何とも思わないような行為に走る人間に対しては、防犯カメラも巡回パトロールも効果がなく、防ぎようがない。同じような事件が起きないようにするためにも、子どものころから命の尊厳を繰り返し教え込むなど地道な努力を積み重ねて、安全な社会を築いていくしかない

 生命の尊厳を知っているからこそ、上で引用した加藤さんのコメントのように、それを壊すことで「自己の存在感を示」そうとしたんじゃないかな。

町村信孝官房長官は冒頭のあいさつで「ナイフ規制の問題、派遣労働の問題、販売業者の問題、インターネットを使った問題、どういう対策が可能か幅広く検討したい」と述べた。

 繰り返しになるけど、全然対策にならないと思う。

会合後、舛添要一厚生労働相は記者団に「派遣労働がみんな悪いわけではないが、問題があることを念頭に置くことや、被害者家族の心のケアをしっかりやろうと話した」と説明。

 派遣労働に原因の一端があるようにいうのは、まじめに働いている派遣労働者に失礼なんじゃなかろうか。
 被害者家族もそうだけど、当時秋葉原にいて事件を目撃した人の心のケアも考えなければならないと思う。

 増田寛也総務相は容疑者が携帯電話サイトに犯行予告を書き込んでいたとみられることを踏まえ「ネット上の犯罪予告を見つけたら、通報を関係団体に要請している。時間との勝負という面もあり、自動的に選別するシステムを作れないか」と述べた

 いうのは簡単だけど、実際はノイズが多すぎて無理だろう。